創業2年目にインターンで入社をした久岡 佳史。創業期の混沌としたころも経験をし、時代の変化に合わせて会社と共に成長してきた彼は、現在デジタル広告事業部のマネージャーとして活躍している。彼から見るギャプライズの強さや広告事業のおもしろさ、これからのビジョンにスポットライトをあてる。
仕事の原点は失敗から。クライアントを退店に追い込んでしまった過去
久岡 「入社のきっかけは大学時代のサークルの先輩である現代表・甲斐 亮之からの紹介です。先に彼がギャプライズにジョインしていて翌年に僕も参画しました」
大学卒業と同時に創業間もないギャプライズに入社した久岡は会社同様まだまだ発展途上。頼まれた仕事はすべて引き受けながら、言われたことなどはスポンジのようになんでも吸収をして仕事に取り組んでいた。
久岡 「うちはスタートのときから着ぐるみのネットショップ運営をしていて、そこで店長業務を任されました。そこでは、コンテンツ企画やページの更新、商品の仕入れから発送、クレジット決済のオーソリゼーションや与信の確認など、ビジネスの基本やお金の流れなどを学べました。
また、当時はイラストレーターも触らせてもらっていて、名刺のデザインもしましたね」
もともと器用な久岡は雑多なタスクを一手に担いながら、毎日遅くまで働いた。
入社半年もしたところで、とあるプロジェクトのディレクターに抜てきされる。
久岡 「老人ホームのシステム構築案件のディレクターを経験させてもらいました。プロジェクトメンバーにはシステムベンダーのパートナー、CIデザイナー、コンテンツデザイナーなど第一線で活躍されている人ばかりでした。ですが、その中で毎日必死に食らいついていきました。
振り返ると要件設計も手探りのままMTGの場に挑むなど、周りの人にも多大な迷惑をかけながらでしたが、ローンチしたときは本当に嬉しかったです。同時進行するタスク管理や調整する業務に関してはだいぶ勉強をさせてもらいました」
同時期に、会社の主事業だったECのコンサルティング案件に携わる。そのときに感じた想いが今の久岡の仕事への姿勢を決定づけることに。
久岡 「知名度のない小規模ネットショップは売り上げを伸ばすことが本当に難しいです。家族経営の方も多く、広告をひとつ打つにしても全力勝負。企画を練りに練って、たくさん仕掛けもした上で出してもらったのに成果が思うように出せず、お店を退店してしまったこともありました。
ただ実際のところ、かなり厳しい挑戦だったのにそのまま進行を促していて。振り返るともっとリスクヘッジはできたと後悔が残る仕事でした」
正確なデータと情報が大前提。衝突を恐れず誠心誠意お客様と対話していく覚悟が決まった経験となった。
支援企業の上場ストーリーを下支えした、予算50倍の体験
サイト構築に関わる業務が増えていくにつれ、広告運用の案件も徐々に増えていった。
そんな中ある変化が訪れる。
久岡 「自社ECの運用案件がきっかけで、当時オーバーチュア(現:Yahoo広告)の管理画面を触るようになりました。予算も少なかったので少額でテストを回す程度だったのですが、転機になったのは、とある注文住宅のセミナー集客案件でした。
当時の窓口のセールスだったスタッフが先方の担当マネージャーに気に入られて。大手代理店さんの乗り換えという大きな仕事が、急きょ舞い込んできたんです。これはチャンスだと思い、ふたつ返事で『やります!』と答えました」
当時ギャプライズは運用費をすべて固定費でいただいていたが、先方の都合で前代理店の内容のままである変動費形態の継続を希望され、運用がスタート。月300万程度の広告費を初の変動費で取り扱う体験はサービス設計に大きな影響を及ぼした。
久岡 「広告の運用業務はショットの制作案件とは異なり、中長期の契約が見込まれる案件。かつ、大きい案件であればあるほど当社の粗利が安定的に増えるので、会社としてもどんどん取りに行こうという方針となって。僕自身が主担当となり勉強会などにも積極的に参加をし、すぐにYahooの代理店になりました」
順調に案件も増え、大きな経験を得ることに。
久岡 「とあるCtoCサービスのスタートアップから携わらせていただきました。当初月間50万位の広告費だったのですが、毎月のように売上規模が膨らんでいき、それに合わせて広告予算も増額して、最終的に2,500万円以上にまで拡大。
案件自体は2年以上お手伝いをさせていただきましたが、自社運用に切り替えるとのことで、ナレッジノウハウを先方の担当に引継ぎました。その後間もなくその会社は上場されたんです。
彼らのビジネス自体には、商売の原理原則が詰まっていました。毎月のMTGも広告の成果よりビジネスとしてどう成長できるか議論をしていて、その経験は毎回エキサイティングでとても鍛えられました。
複数の事業を横断してキャンペーンを管理していましたが、当然人を増やしたら売上を伸ばさなければいけないですし、ただ先方の事業を回すためのキャパシティにも限りがあります。
タイミングに応じて、どこの事業に広告配信の注力をしなければいけないか、利益をどこで手に入れるかなど、ただの販促費として渡されるものではなく、会社を経営していくための生き金にしていかなければいけないというやり取りは、その後のクライアントワークに生きる経験でした」
投資を受けて価値を返す仕事
広告運用業務は、さまざまなサイズ感の競合他社がひしめく、いわゆるレッドオーシャン事業。差別化が難しいなか、当初より変わらない3つの原点的な価値がある。
それは、しっかりとデータを開示すること。MTGの目的は報告ではなくディスカッション。そして、隠しごとゼロで、期待をいたずらに上げることなく誠心誠意向き合うことだ。
一見当たり前のように聞こえるが、ここに他社とは一線を画すアドバンテージが確かに存在する。
久岡 「たとえば実際サービスの利益率を考えると効率的なMTGを行いがちです。しかし、われわれに求められているのは成果(売り上げや成約数など)を上げること。成果を出すためのプロセスはけっして軽視してはいけないし、クライアントの話だけを聞く御用聞きになってもいけないです。
実際、ディスカッションができるクライアントとはずっといい関係を続けられています。私はEC運用やランディングページもたくさんつくってきたバックボーンがあることで、成果に対する本質的な話ができると思っています。
また複雑化したオンラインのコミュニケーションで、広告予算の拡大だけを取りに行こうとすると、価値提供をできないケースがほとんど。ですが、ツールやコンサルティングを含めた全体で提案できる点はシンプルにうちの強みですね」
久岡の自信の背景には、厳しいプロジェクトを潜り抜けてきた経験が大きい。では、何を身につけてきたのか。
久岡 「知識や情報はどんどん古くなるのでアップデートが必要です。でも広告事業のような、投資を受けて価値を返すやり取りは大きな責任が伴ないます。その結果普遍的な力、それは思考力や粘り強さなどさまざまありますが、それらが複合的に身につくと思いますね。
そのような成長が起こるには、やはり案件にがっつり取り組む必要があります。さらに本気の人と仕事ができるかどうかもとても重要です。なので、そういった経験を積んでいった結果、どんなプロジェクトでもガチンコで向き合える胆力がつくと思います」
デジタルはもっと多くの人を幸せにするツールだ。
これまでの経験を生かし、久岡の関心事はどこに向いているのだろうか。
久岡 「toCのビジネスモデルに興味があります。主担当として関わっていきたいです。広告自体はどんどん自動化が進んでいく流れですが、ユーザーが触れる広告面はテクノロジーの進化とともにさらにおもしろくなっていきます。なので、さらにオンライン上のコミュニケーションを深堀っていきたいです 。
デジタルってもっと多くの人を幸せにするツールだと思っているんですが、どんどん高度化複雑化していっています。僕のノウハウを活用して地方に眠っている企業の情報を全国のユーザーに届けていきたいです。極論を言うと、自社でtoC向けのサービスを持つのもおもしろいなって思っています」
長きにわたり獲得広告に携わってきた久岡は広告事業の未来をどう見ているか。
久岡 「僕自身ECから始まるダイレクトマーケティングの経験が多く、強みとして持っているのですが、とくに認知広告の分野はテクノロジーも爆発的に進化していますので、しっかり顧客の価値につなげるものを採択して、認知⇒獲得までのシナリオをつくり切れるプランナーになり、人も育てていきたいと思っています」
久岡には現在の業務以外にもやってみたいことがある。
久岡 「スキルの高いフリーランスの方が世の中には多いので、プロフェッショナルを抱えるプロダクションのようなものをつくってみたいですね。お笑い芸人でいう吉本工業のようなものがWeb周りにあってもおもしろいなって思うので。
どうしても現在は時間売りや、コストパフォーマンス面が目立ちがちですが、フリーランスの方々の経験をしっかり売り出せるような矜持やプライドを、満たせるしくみがつくれたらなって思っています」
さまざまなところで経験を積んできた久岡が目指す未来。これからも彼は目標を掲げ、そこに向けて歩みを進める。